糖尿病とED(勃起不全)について

糖尿病は血糖値の高い状態が続くことで全身の血管や神経に障害を及ぼし、失明や腎障害など深刻な合併症を引き起こす可能性があり、その一つにED(勃起障害)が含まれます。

全国4,000人の調査から、糖尿病を持つ男性の約半数が中等度以上のEDを抱えており、ED患者の約3人に1人は糖尿病やその予備軍と関係があることが分かり、糖尿病がED発症の大きなリスク要因であるといえます。

糖尿病性EDは神経障害や血流障害など複数の要因が重なって起こり、治療には生活習慣の見直しに加えて、PDE5阻害薬の服用が効果的とされており、症状の改善には血糖コントロールと適切な治療の継続が重要です。

糖尿病とED

糖尿病3大合併症

糖尿病は、血管や神経にダメージを与えやすい病気です。その影響は全身に及びますが、勃起に必要な血流や神経の働きにも影響するため、ED(勃起障害)とも深く関係します。

2025年版の「男性性機能障害診療ガイドライン」でも、糖尿病のある男性は糖尿病のない男性より10?15年早くEDを発症するとした報告が紹介されています。

糖尿病はインスリンの分泌が不足したり働きが低下して、血糖値が高い状態が続く病気です。初期は自覚症状が少ない一方で、進行すると失明や腎機能障害などの合併症につながることがあります。医療機関では、空腹時血糖値126mg/dL以上やHbA1c 6.5%以上などを診断の目安として、必要に応じて繰り返し検査で確認します。

糖尿病とEDの合併率

当院でED治療薬の処方を希望される方の中にも、糖尿病の治療中(糖尿病薬を服用中)の方は少なくありません。そこで、糖尿病とEDがどのように関わっているのかを把握するため、当院にてアンケート調査を実施しました。結果を以下にご紹介します。

集計期間 : 2021年5月7日?9日
調査方法 : インターネット集計
調査対象 : 日本全国の40?79歳の男性 合計4,000人(5歳階級ごとに500人)
リサーチ協力 ⇒ 株式会社ネオマーケティング

  • EDではない:毎回、性交に十分な勃起を得ることができて維持することもできる
  • 軽度ED:たいていの場合、性交に十分な勃起を得ることができて維持することもできる
  • 中等度ED:時々、性交に十分な勃起を得ることができて維持することもできる
  • 重度ED:毎回、性交に十分な勃起が得られない。また、維持もできない

※糖尿病予備群:「空腹時血糖値(GLU)100?125mg/dL」または「HbA1cが6.0?6.4%」

  EDではない 軽度ED 中等度ED 重度ED 合計
糖尿病と診断されている 130
(31.3%)
84 (21.2%) 82 (19.7%) 120 (28.9%) 416 (100%)
糖尿病になりかけている
(糖尿病予備群)
172
(37.6%)
116 (25.3%) 91 (19.9%) 79 (17.3%) 458 (100%)
糖尿病ではない 1,626
(53.4%)
632 (20.7%) 445 (14.6%) 344 (11.3%) 3,047 (100%)
わからない 44 (55.7%) 9 (11.4%) 18 (22.8%) 8 (10.1%) 79 (100%)

この調査により糖尿病の方のうち、2人に1人は中等度以上のED有病者であり、糖尿病では無い人は4人に1人ということが判明。つまり糖尿病になるとEDのリスクが2倍となるのです。
次に今回の調査での糖尿病有病者率を元に糖尿病患者数とED合併者数を算出してみます。

糖尿病とED合併の推計人数(2022年)

住民基本台帳に基づく全国の5歳階級別人口総計(令和4年人口)により糖尿病有病者数を算出

  糖尿病と診断されている 糖尿病になりかけている
(糖尿病予備群)
糖尿病ではない わからない 糖尿病+
糖尿病予備群
40?79歳の
男性4,000人を対象
416人
(10.40%)
458人
(11.45%)
3,047人
(76.18%)
79人
(1.96%)
874人
(21.85%)
人口統計より
人数を算出
3,409,912 3,754,181 24,975,966 647,555 7,164,094
中等度以上の
ED有病者数を算出
1,655,775 1,393,474 6,467,357 213,119 3,049,248

当院にて2022年に20?79歳男性を対象に実施した日本のED有病者数調査では中等度以上のEDで悩む男性は952万人と推定されました。この中で上記調査対象である40?79歳に絞ると中等度以上のED有病者数は837万人。糖尿病及び糖尿病予備群での中等度以上のED有病者数は305万人。つまり中等度以上のEDで悩んでいる男性(40?79歳)の2.7人に1人は糖尿病が関わっているということになります。

糖尿病有病者数(令和6年調査/令和7年12月公表)

厚生労働省「令和6年(2024年)国民健康・栄養調査」(令和7年(2025年)12月2日公表)では、20歳以上の男性で「糖尿病が強く疑われる者」の割合は17.7%とされています。年齢別では40代4.9%、50代15.2%、60代20.5%、70歳以上26.0%で、年齢とともに割合が高くなります。なお、「糖尿病が強く疑われる者」は男女全体で約1,100万人と推計され、平成9年の690万人から増加しています。

※当院アンケートは「糖尿病と診断されているか(自己申告)」、国民健康・栄養調査は「糖尿病が強く疑われる者(血液検査等の指標)」で定義が異なるため、数値は単純比較できません。また、当院アンケートは40?79歳、国民健康・栄養調査は20歳以上が対象です。

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なぜ糖尿病の方はEDになりやすいのか?

正常な勃起のためには脳や神経、海綿体、血流などが問題なく機能する必要があります。糖尿病性EDは、下記にあげるような複数の問題が組み合わさって発症する場合が多く見られ、男性性機能障害診療ガイドライン(2025年版)でも、器質性EDの要因として「糖尿病」が挙げられています。

ガイドライン(2025年版)での「糖尿病」の位置づけ

男性性機能障害診療ガイドライン(2025年版)では、器質性EDの要因を「血管性」「神経原性」「ホルモン性(テストステロン低下)」「他の病態生理の混在」などに分類しています。その中で糖尿病は、複数の分類に関与しうる代表的な基礎疾患として整理されています。

  • 血管性(血管障害):糖尿病で血管が傷み、動脈硬化が進むと、陰茎へ流れる血液が減ります。結果として、十分に硬くならない・途中で萎えるといった症状が起こりやすくなります。
  • 神経原性(末梢神経障害):糖尿病では末梢神経(自律神経を含む)の障害が起こりやすく、性的刺激の伝達や勃起反応が弱くなることがあります。
  • ホルモン性(テストステロン低下):糖尿病やメタボリックシンドロームと関連してテストステロンが低下する場合があり、性欲低下や勃起機能低下に影響することがあります。
  • 病態の混在(合併症・併存疾患):糖尿病のある方で、さらに高血圧を合併したり、糖尿病性腎症や神経障害(末梢神経障害)が進むと、血流・神経伝達・ホルモンの影響が重なり、EDが悪化しやすくなります。

[Image showing the role of nitric oxide (NO) in vasodilation and how advanced glycation end-products (AGEs) in diabetes impair this mechanism]

神経障害

勃起は、脳で感じた性的刺激が陰茎に伝わることによって起こりますが、糖尿病によってその神経回路に障害が生じやすくなります。

海綿体の機能不全

「平滑筋の弛緩」も勃起に必要不可欠です。しかし糖尿病により、海綿体動脈などの内皮細胞において「内皮型一酸化窒素合成酵素」(eNOS)の活性が低下することで、弛緩が起こりにくくなります。

動脈硬化

全身の血管に動脈硬化があらわれるのは、糖尿病の典型的な症状です。とくに内腸骨動脈から陰茎動脈にかけて硬化が生じると、勃起機能の大幅な低下につながります。
また性器海綿体の毛細血管は、体の中でも特に細い血管で、動脈硬化により、血流がもっとも低下しやすい血管です。逆に言うと、EDの症状は体の中で糖尿病やその他の病気、加齢やストレス、飲酒、喫煙などによって動脈硬化が進んでいるサインでもあります。

上記のような、身体的な原因から生じるEDを「器質的ED」と呼びます。他にも、糖尿病で生じた抑うつ傾向による「心因性ED」や、糖尿病薬や降圧剤などによる「薬剤性ED」もあり、他の病気と比較してもEDを誘発する因子が多いといえるでしょう。

動脈硬化の症状は細い血管から

糖尿病性EDの診断方法

糖尿病性EDかどうかは、血糖値が管理出来ているかの指標となるヘモグロビン A1c(HbA1c)の数値や糖尿病になってからの期間などから動脈硬化の進行度合いを推定し判断します。しかし糖尿病とEDの合併率が非常に高いことが分かっていますので、中折れや十分硬くならないなど自覚症状がある場合には、糖尿病とEDが併発していると考えるのが自然です。

糖尿病性EDの治療法とは?

糖尿病をお持ちの方でも、当院では余計な検査は行わず、ヘモグロビン A1c(HbA1c)値やその他の疾病の有無の確認と普段服用されている薬のチェックをさせて頂き、服用に問題がないようでしたら、ED治療薬をお試し頂き、その効果を判定しています。糖尿病の方の場合でも、バイアグラなどの PDE5 阻害薬の併用は、高い確率で大きな改善が期待でき、豊富な治療実績があるためです。

ご来院の際には、血液検査の結果やお薬手帳をお持ち頂くと、スムーズに確認が出来ます。また郵送での処方も可能です。

※糖尿病のある方では、ED治療薬(PDE5阻害薬)の効き方が弱い場合もあるため、医師が状態に応じて薬剤の選択や用量を調整します。

糖尿病性EDを悪化させないために!

糖尿病性EDを進行させないためには、糖尿病自体を十分に管理し、食生活や運動など生活習慣の見直しや薬での治療をしっかりと継続することが大切です。HbA1c(ヘモグロビンA1c)は合併症予防の観点から、7.0%未満を目標に維持していくことが重要とされています。血糖値が高い状態が続くと、神経や血管にダメージを与え、EDを進行させてしまうためです。
また糖尿病と合併して、高血圧や高脂血症、うつ病などがある場合には、その治療を十分に行っていくことも大切です。

監修者情報

本記事については、すべて浜松町第一クリニック院長である
竹越昭彦が監修しています。

竹越昭彦
院長 竹越 昭彦 (たけこし あきひこ)

略歴

  • 1966年生まれ
  • 1991年 : 日本医科大学卒業
  • 1991年 : 日本医科大学付属病院
  • 1993~2002年 : 東戸塚記念病院 外科
  • 2004年10月 : 浜松町第一クリニック開院
備考

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