腎臓病とED(勃起不全)について

慢性腎臓病が進行し透析が必要になると、血管や神経、ホルモンバランスなど多方面に影響が及び、結果として半数以上の男性にED(勃起障害)が見られるようになります。特に60代以上ではその割合がさらに高くなるとされています。

腎機能低下によるEDの原因は多岐にわたり、動脈硬化、自律神経の乱れ、ホルモン分泌異常、貧血による酸素不足、薬の副作用などが重なって発症します。陰茎の血管は細いため、血流障害の影響を受けやすいことも要因のひとつです。

慢性腎不全患者でもバイアグラやシアリスなどのED治療薬を使用することは可能ですが、代謝能力が低下しているため低用量から始める必要があり、レビトラは使用できません。薬の効果が不十分な場合はICI療法(陰茎注射)も選択肢の一つとなりますが、日本では未承認のため慎重な判断が求められます。

腎臓病とEDの関係

腎臓機能が低下すると、老廃物の排出が不十分となります。症状が悪化すると、人工的に排出する「透析」をおこなう必要がありますが、透析を受けている男性の方では、半数以上の方がEDを発症しているともいわれています。年齢に応じて発症頻度も上昇し、60代の男性透析患者では、約80パーセント近くがED症状を呈するとの報告もあります。

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腎臓病によるEDの原因

慢性腎臓病 (CKD: Chronic Kidney Disease ) は、慢性糸球体腎炎や糖尿病性腎症、間質性腎炎などが原疾患となることが多く、高血圧、糖尿病、高脂血症、メタボリックシンドローム、加齢など様々なことが慢性腎臓病の発症や病状進行の原因となります。自覚症状は病状が進行するまでほとんどないことが多く、そのまま気が付かず病状が進行すると、最終的には末期腎不全となり、人工透析が必要になります。

人工透析を受けるまでになると、血管障害や神経障害、内分泌(ホルモンバランス)障害や貧血など、腎臓が担っていた役割が途絶えるため、多様な症状が発現します。これらが複雑に絡み合って、EDを発症すると考えられます。

動脈硬化による血流障害

進行した慢性腎臓病では腎臓での十分な血液のろ過が出来ず、不要な成分が血液中に過剰となることや、血圧のコントロールが悪くなることなどによって、血管壁が傷つけられやすくなり、動脈硬化が起こりやすくなります。陰茎動脈は非常に細いことから、動脈硬化の影響を真っ先に受けやすいため、EDの発症につながります。

[Image comparing a healthy penile artery with an artery narrowed by atherosclerosis due to chronic renal failure]

自律神経機能障害

末期腎不全になると、自律神経の機能にも障害が発生します。自律神経は勃起を起こす中心的役割を担うことから、これもEDを発症する原因となります。

ホルモン分泌・代謝障害

多くの透析を受けている男性の方では、勃起に必要な血中テストステロン(男性ホルモン)の値が低下していることが報告されています。さらに、プロラクチンというホルモンの排泄が低下するために、透析をされている方の多くで「高プロラクチン血症」が見られ、これらのホルモンバランスの乱れもEDの原因の一つとなります。

腎性貧血(一酸化窒素の合成障害)

進行した慢性腎臓病の方では、貧血の症状が多く見られます。強い貧血の場合には海綿体も低酸素状態となり、血管を拡張させる一酸化窒素の生成機能が低下します。

まずは、エリスロポエチンなどの赤血球造血刺激因子薬製剤を使用して、貧血を解消し、必要に応じてバイアグラなどの PDE5 阻害薬によって、血管の拡張を促すことでED【勃起不全】の症状が大きく改善することを期待出来ます。

薬剤による副作用

透析されている方には、さまざまな薬物が処方されることが多いのですが、これらのうち降圧薬や抗うつ薬、潰瘍治療薬などが原因となって薬剤性EDを引き起こすことがあります。腎機能が低下すると、薬の代謝も落ちることが多く、薬による副作用によって強いED症状が出ることが考えられます。

血行障害

末期腎不全では、身体の様々な臓器の血行障害が頻繁に発生することから、海綿体への血液の流入も妨げられ、EDにつながります。

PDE5 阻害薬の使用について

慢性腎不全の方も、ED治療薬である PDE5 阻害薬を服用できます。ただし、服用できる薬に制限が設けられていますので注意が必要です。

重度の腎障害ではバイアグラとシアリスは、経過を慎重に観察した上で服用が可能とされていますが、レビトラは禁忌とされています。また透析を受けている場合は、バイアグラとシアリスの服用が可能ですが、状態によって服用量の設定には十分な注意と管理が必要です。

慢性腎不全の方が PDE5 阻害薬を服用した場合、薬の代謝機能が低下しているために、健常者と比べて血中濃度が上昇しやすくなります。そのため、まずは少量から開始することが基本です。

思わぬトラブルの原因となりますので、透析を受けていることを医師に必ず伝え、十分相談をすることが大切です。

その他の治療法

慢性腎不全の方でも、バイアグラなどのED治療薬が多くの方で有効ですが、十分に効果が得られない場合では、薬剤を直接陰茎に注射して血管を拡張し、勃起を促すICI療法があります。日本では ICI 療法は認可がおりていない方法ですので、自己責任でおこなう必要があります。この方法はED治療薬が使用できないケースでも効果が認められています。

監修者情報

本記事については、すべて浜松町第一クリニック院長である
竹越昭彦が監修しています。

竹越昭彦
院長 竹越 昭彦 (たけこし あきひこ)

略歴

  • 1966年生まれ
  • 1991年 : 日本医科大学卒業
  • 1991年 : 日本医科大学付属病院
  • 1993~2002年 : 東戸塚記念病院 外科
  • 2004年10月 : 浜松町第一クリニック開院
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