薬剤性EDとは?

日常的に服用している薬の中には副作用としてED(勃起障害)を引き起こすものがあり、特に精神安定剤、抗うつ薬、睡眠薬、降圧剤などが関係することが多く、これを薬剤性EDと呼びます。自己判断で加齢や心の問題と決めつけず、気になる場合は医師に相談することが勧められます。

抗うつ薬や向精神薬には、セロトニンの増加やドパミン抑制などが原因で性機能を低下させる作用があり、服用中の人がうつ状態から回復した際にEDに気付くことがあります。副作用情報が添付文書に記載されていない場合もあるため、主治医としっかり話すことが大切です。

降圧剤や男性ホルモン抑制剤、AGA治療薬などもEDの原因になることがあり、性機能低下を感じた場合には薬の種類や量の調整が有効なことがあります。ただし、自己判断で中止せず必ず医師に相談し、副作用とQOL(生活の質)を総合的に考慮することが必要です。

薬剤性EDとは

薬のイメージ画像

普段から常用している薬の副作用が原因で起きてしまうEDのことを、薬剤性EDと呼びます。特に、20代の若い世代で精神安定剤や抗うつ薬・睡眠薬・向精神薬を服用している方がEDの症状を訴えている場合や、降圧剤や脂質異常症の治療薬、胃潰瘍治療薬などを長期に服用している方は薬剤性EDを疑うようにしています。

気になる症状がありましたら、医師や薬剤師に相談してみるといいでしょう。

特に注意が必要なのは、薬剤性EDのことを知らずに、今あるEDの症状を『年をとったせいだ』と勝手に判断したり、うつ病の方が『EDも心の病』だと思い込んで更に病状を悪化させる可能性があるという点です。

素人目ではなかなかわからないことですから、気になる症状が現れたら、クリニックで問診を受けてみることがおススメです!

以下では、EDを引き起こしやすい薬を種類別に、ご説明します。

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降圧剤によるED

高血圧の治療に使われる降圧剤の中には、EDの副作用がみられる薬があります。
もともと高血圧の方では動脈硬化を起こしやすいため、EDのハイリスク群とされていますが、降圧剤を使用している場合は薬剤性EDの可能性も考慮する必要があるでしょう。

たとえば降圧利尿薬のサイアザイド系「ヒドロクロロチアジド」や、カルシウム拮抗薬「ニフェジピン」、中枢作用性交感神経抑制薬「メチルドパ、クロニジン」、β ブロッカー「アテノロール、プロプラノロール」などでは、薬の副作用でEDの症状が起る可能性があります。その中でも、利尿薬か β ブロッカーを服用している方は、カルシウム拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE 阻害剤)、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)を服用している方よりED有病率が高いという研究結果があります。

またアンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬では性活動や勃起機能において保護的に働くという研究結果もあります。しかし、この2薬剤にてED症状が出たという報告もあり、はっきりと結論が出ていません。
降圧剤を服用している高血圧の方と降圧剤を服用していない高血圧の方では、降圧剤を服用している方が、優位にED率が高いという358名の研究結果があり??、降圧剤が勃起に与える影響は少なからずありそうです。

降圧剤がEDを引き起こすメカニズムについては、まだ明らかにされていませんが、動脈硬化がある場合での血圧の低下は性器への血流量を低下させ、EDのリスクファクターとなることが一つの要因として挙げられます。
だからといって、降圧剤を服用せずに、血圧が高い状態に放置することは、血管壁を傷つけ動脈硬化を進行させることになります。

降圧剤によるED症状がある場合には、バイアグラなどの PDE-5 阻害薬で高い有効性があります。ED治療薬と一般的な降圧剤との併用については、問題は報告されていませんのでご安心下さい。

※PDE-5阻害薬は、硝酸薬(ニトログリセリン等)とは併用できません。また、α遮断薬など一部の薬では血圧が下がり過ぎる可能性があり、併用には注意が必要です。必ず処方医にご相談ください。

参考文献 1) Doumas M,Tsakiris A,Douma S,Grigorakis A,Papadopoulos A,Hounta A,Tsiodras S,Dimitriou D,Giamarellou H. Factors affecting the increased prevalence of erectile dysfunction in Greek hypertensive compared with normotensive subjects. J Androl 2006;27:469-477

精神安定剤・抗うつ薬・向精神薬によるED

抗うつ剤や安定剤、睡眠薬、向精神薬などを服用している場合には、薬剤性EDの可能性が十分にあります。

一般的に、うつ状態にある場合には、うつ症状のために性行為をしたいと思うことも少なくなり、薬の副作用でEDになっていてもそのことに気が付きにくいことがあります。しかし、うつ状態が安定してきた場合や躁状態となった場合に性行為をしようとした際に、うまく勃起出来ず、ED症状が出ていることでご相談に来られる方が多くいらっしゃいます。そして、当院での問診で、初めて服用していた薬の副作用が原因でEDになっていることに初めて気が付くケースも多いのです。

注意が必要なのは、抗うつ薬・向精神薬の中には、添付文書にも副作用としてEDがあることが明記されていないことがあります。そのため、精神科又は心療内科にて処方を受ける際に薬の副作用としてEDがあることを主治医から伝えてもらっていないケースも見受けられます。

抗うつ薬の副作用による性機能障害は、特にアモキサン(アモキサピン)、トフラニール(イミプラミン)等々の三環系抗うつ薬、パキシル(パロキセチン)、ジェイゾロフト(セルトラリン)等々の選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、トレドミン(ミルナシプラン)等のセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)などで報告がされています。
抗うつ薬が性機能障害を引き起こす理由としては、セロトニン濃度の増加が挙げられます。うつ病ではセロトニンが不足している状態の場合が多く、神経節中にセロトニンの量が多くなるようにする薬がよく使われますが、セロトニンはドパミンやノルアドレナリン系の神経を抑制するため、性機能を抑える働きもあります。
また末梢神経系におけるセロトニンの上昇は、感覚を低下させるため、オーガズムや射精の遅延、EDなどにつながることも指摘されています。

その他、精神安定剤や向精神薬の中には、性欲の低下やEDを引き起こす「高プロラクチン血症」になりやすい薬もあります。特に、ドパミンD2受容体を遮断する作用をもつ薬では、性機能障害は重大な副作用の1つに数えられています。

このような場合でも、バイアグラなどの PDE5 阻害薬は有効です。十分効果が得られない場合などでは、容量や薬の種類を検討しますので、再度ご相談頂ければと思います。
またバイアグラをはじめとする PDE5 阻害薬は、性機能を回復することによって、うつ状態にも良い影響を及ぼすことが報告されています。

抗うつ薬の中では、ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)に分類される「ミルタザピン」がEDの副作用が比較的少ないという報告があります。詳しくは抗うつ剤の種類とEDをご確認ください。

※休薬や薬の変更、服用量の変更などは、うつ状態などを急激に悪化させ危険な状態となる場合がありますので、自己判断はせず必ず主治医にご相談ください。

男性ホルモン抑制剤・抗アンドロゲン剤によるED

男性の性欲や勃起機能に大きな影響を与えているホルモンが、テストステロンです。この分泌を抑える薬では、副作用としてEDが表れることがあります。

たとえば、前立腺がんの治療でおこなわれる「アンドロゲン除去療法(ADT)」などは、LH-RH アゴニストなどの男性ホルモン抑制剤を用いるため、EDや性欲低下がみられます。治療中に血清テストステロン値をはかると、去勢レベルの低下を示すことから、性機能は明らかに下がることが分かっています。薬の投与を中止すれば、テストステロン値は徐々に回復しますが、高齢者ではそのスピードが遅いこと、また治療前のレベルまでは回復しないケースがあることも報告されています。ただし、男性ホルモンが低下することで、性欲もいっしょに低下することが多いため、性行為をする機会がなく、ED自体を苦痛と感じない方も少なくありません。

また、AGA治療薬として使用されているフィナステリドやデュタステリドもDHT(ジヒドロテストステロン)の生成に必要な5α還元酵素を阻害することから副作用で勃起不全の報告がされています。当院が2024年に行ったインターネットアンケート調査では、フィナステリドで64.4%、デュタステリドで73.3%の方が「性機能低下の副作用があった」と回答しています。

どんな薬が薬剤性EDになりやすい?

これについては日本性機能学会/日本泌尿器科学会編集の「ED診療ガイドライン(第3版)」などでも整理されています。

また2025年9月19日には、EDに限らず性欲低下・射精障害なども含めて扱う「男性性機能障害診療ガイドライン 2025年版」として、性機能全般を網羅した内容で発行されました。

本ページではこれらを参考にしつつ、患者さんに分かりやすいよう当院で薬剤の種類を整理して解説します。

薬剤性EDが疑われる場合でも、原因が「薬」だけとは限らず、原疾患そのものがEDの原因となっているケースも少なくありません。

たとえば降圧剤は副作用としてEDが起こる可能性が指摘されていますが、高血圧そのものが動脈硬化などを通じてEDのリスクを高めるため、「高血圧が原因なのか」「降圧剤の影響なのか」を明確に区別するのは簡単ではないことが、「男性性機能障害診療ガイドライン 2025年版」でも注意点として触れられています。

このため、EDを心配して自己判断で薬を中止・減量するのは危険です。必ず主治医に相談し、必要に応じて薬の変更や併用薬(ED治療薬など)を含めて安全に調整するようにしましょう。

薬剤性EDになりやすい薬一覧

降圧剤 利尿剤(サイアザイド系、スピロノラクトン)
Ca拮抗剤
交感神経抑制薬
β遮断剤
精神神経薬 抗うつ薬(三環系抗うつ剤、SSRI、MAO阻害薬)
向精神病薬(フェノチアジン系、ブチロフェノン系、スルピリド、その他)
催眠鎮静薬(バルビツール系)
麻酔
ホルモン剤 エストロゲン製剤
抗アンドロゲン薬
LH-RHアナログ
5α還元酵素阻害薬
抗潰瘍薬 スルピリド、メトクロプラミド、シメチジン
脂質異常症治療薬 スタチン系
フィブラート系
呼吸器官・アレルギー用剤 ステロイド剤
テオフィリン
β刺激薬・抗コリン薬
抗ヒスタミン薬(クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン)
プソイドエフェドリン
その他 非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)

SSRI : 選択的セロトニン再取込み阻害薬、MAO : モノアミン酸化酵素

薬剤性EDは、薬の中止や減量、もしくは他剤への変更などによって改善される可能性が高いEDでもあります。医療現場でも薬剤性EDの認知が進み、対応方法も検討されていますので、気になる症状がある人はぜひ一度主治医や当院のED専門医に相談してみましょう。上記の表の中でも当院に来院されるEDに悩みを抱える患者様の中で抗うつ薬や抗精神病薬を服用している方の割合が高い印象です。降圧剤を服用している患者様も多いですが、この場合、そもそもEDを引き起こしている原因が高血圧である場合も多いので、どの程度降圧剤自体が影響をしているのか判断がし難いというのが現場での感想ではあります。

※EDという副作用を懸念して自己判断で服用量を変更したり、服用するのを止めるのは大変危険です。必ず主治医にご相談ください。

H2ブロッカー(胃薬)

胃薬として使われるH2ブロッカーの中には、性機能に影響する可能性が指摘されているものがあります。特にシメチジン(タガメット)は、男性ホルモンに関わる作用が知られており、性欲低下やEDにつながる場合があります。

一方で、同じH2ブロッカーでもファモチジン(ガスター)などは、一般的にはシメチジンほど男性ホルモンに関わる作用が強くないとされ、性機能への影響は大きくないと考えられています。

抗ヒスタミン薬(眠気が出やすい人は注意)

抗ヒスタミン薬は、アレルギー症状やかゆみ止めなどに広く使われる薬です。薬の種類や体質によっては眠気(鎮静作用)や口の渇きが強く出ることがあります。

このように鎮静作用や抗コリン作用が強く出る場合、性的興奮が起こりにくい・感覚が鈍い・勃起の維持が難しいなど、性機能に影響する可能性が指摘されています。

とくに眠気が出やすい成分(代表例)として、以下のような薬があります。

  • d-クロルフェニラミンマレイン酸塩(先発品名 : ポララミン)
  • クレマスチンフマル酸塩(先発品名 : タベジール)
  • ヒドロキシジン(先発品名 : アタラックス/アタラックスP)
  • ジフェンヒドラミン塩酸塩(先発品名 : レスタミン)
  • プロメタジン(先発品名 : ヒベルナ/ピレチア)
  • シプロヘプタジン(先発品名 : ペリアクチン)

花粉症などで「眠気が強い」「最近うまくいかない」と感じた場合は、薬の変更(眠気の少ない薬への切り替え)で改善することもあります。自己判断で中止・減量せず、眠気やだるさが気になることを主治医または薬剤師にご相談ください。

QOL の維持のために

持持病の治療で服用する薬は、風邪薬などと異なり、長期間の使用となることが一般的です。そのため、常用薬の副作用によって性行為がうまくいかないなど QOL(生活の質)が低下している場合には、ずっと続くことになりますので、我慢するのではなくよく考慮する必要があります。

薬の副作用を十分に確認し、医師と話し合うことが大切です。

その他、薬によって引き起こされる性機能障害は、男性のEDのみならず、女性でもオーガズムを感じにくくなるなどの症状が考えられます。しかし日本では海外と比べて、性機能について専門で治療している医療機関が少なく、また医師に相談する割合も少ないといわれます。
常用薬は、主治医とよく相談をして、その効果や副作用も十分に理解しておきましょう。

監修者情報

本記事については、すべて浜松町第一クリニック院長である
竹越昭彦が監修しています。

竹越昭彦
院長 竹越 昭彦 (たけこし あきひこ)

略歴

  • 1966年生まれ
  • 1991年 : 日本医科大学卒業
  • 1991年 : 日本医科大学付属病院
  • 1993~2002年 : 東戸塚記念病院 外科
  • 2004年10月 : 浜松町第一クリニック開院
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