双極性障害とED
双極性障害(躁うつ病)は、気分の高揚(躁状態)と気分の落ち込み(うつ状態)を繰り返す精神疾患で、うつ状態でのみ受診することが多いため、うつ病と誤診されやすく、正しい診断までに時間がかかるケースが多くあります。
治療は気分安定薬(リチウム、バルプロ酸など)が中心であり、抗うつ薬は躁状態を誘発する可能性があるため慎重に扱う必要があります。副作用も多いため、医師の指導のもと継続的な血中濃度の管理が必要です。
双極性障害とEDは密接に関連しており、うつ状態では性欲が減退しEDに気づかないこともありますが、躁状態で性欲が高まったときにEDを自覚することがあります。治療薬の副作用もEDの原因となるため、気になる場合は主治医に相談することが重要です。
双極性障害とは?
双極性障害(双極性感情障害)は、かつて「躁うつ病」と呼ばれていた精神疾患です。気分が過度に高揚し、エネルギーが溢れる「躁(そう)状態」と、気分が著しく落ち込み、活動性が低下する「うつ状態」という、対極にあるエピソードを繰り返すのが最大の特徴です。単なる気分の浮き沈みではなく、日常生活や社会活動に支障をきたす著しい乱れが生じます。
双極性障害の分類
躁状態の程度により、大きく2つの型に分類されます。
- 双極 I 型障害 : 社会生活に支障をきたすほど激しい「躁状態」を認めるもの。
- 双極 II 型障害 : 本人や周囲も気づきにくい軽度な「軽躁状態」と、深刻な「うつ状態」を繰り返すもの。
医学的には、躁状態のエピソードが一度でもあれば、その後にうつ状態になり得るため双極性障害として診断・治療が行われます。
各エピソードにおける症状の特徴
うつ状態の主な症状(うつ病エピソード)
抑うつ気分や興味の喪失に加え、活動性の減退による「易疲労感」に悩まされます。診断には、以下の症状が少なくとも2週間持続することが一つの目安となります。
(a) 集中力と注意力の減退

(b) 自己評価と自信の低下

(c) 罪責感と無価値観

(d) 将来への悲観的な見方

(e) 自傷・自殺念慮

(f) 睡眠障害(不眠・過眠)

(g) 食欲不振

[Image of common symptoms of a major depressive episode]
躁状態の主な症状(躁病エピソード)
万能感に満ちた高揚感が生じ、心身の活動性が異常に亢進します。躁病では1週間以上、軽躁病では数日間持続します。
(a) 根拠のない過度な高揚感

(b) 活動量と速度の増加

(c) 気力とエネルギーの充満

(d) 著しい心身の好調感

(e) 社交性の増大・多弁

(f) 性的活動の亢進

(g) 睡眠欲求の減少

(単極性)うつ病との区別と治療の難しさ
双極性障害は誤診されやすく、受診者の37%が最初は「単極性うつ病」と診断されているという報告があります。これは、患者が受診するのが主につらい「うつ期」であるためです。正しい診断には、過去の躁状態(気分の良すぎた時期)がないか、医師による詳細な病歴確認が不可欠です。
双極性障害の主な治療法
治療の基本は、カウンセリング以上に薬物療法が中心となります。
- 気分安定薬 : リチウム、バルプロ酸、カルバマゼピンなど。リチウムは基本薬ですが、血中濃度の管理が重要です。
- 非定型抗精神病薬 : クエチアピン、オランザピン、ルラシドン(ラツーダ)など。
【重要】併用注意 : 市販の痛み止め「ロキソプロフェン」は、リチウムの血中濃度を上昇させ中毒を招く恐れがあります。服用中の薬がある場合は必ず医師に相談してください。
双極性障害とEDの関係
双極性障害は、その病状サイクルと治療薬の両面から性機能に影響を及ぼします。
病相による性機能の変化
- うつ状態 : 性欲そのものが著しく減退し、性行為自体を億劫に感じるため、EDを自覚しにくい傾向があります。
- 躁状態 : 性欲が異常に高まりますが、一方で治療薬の副作用や自律神経の乱れ、神経伝達の不具合により、「性欲はあるが勃起・維持ができない」というEDの状態を強く自覚しやすくなります。
双極性障害の治療を継続しながら、EDの改善を図ることはQOL(生活の質)向上のために重要です。薬の副作用による薬剤性EDが疑われる場合も含め、主治医や当院のような専門医に相談し、適切なアプローチを見つけていきましょう。
略歴
- 1966年生まれ
- 1991年 : 日本医科大学卒業
- 1991年 : 日本医科大学付属病院
- 1993~2002年 : 東戸塚記念病院 外科
- 2004年10月 : 浜松町第一クリニック開院
- AllAbout「ED・勃起不全」ガイド担当
- 日本化学療法学会員
- 日本形成外科学会員
- 日本性機能学会員 外科
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